▽ 少女Yの水葬

 

 

嫉妬、劣等、絶望。少女は潜考する

寄せては引かない 名も無い海へと

午前二時の闇 劈く静寂

深海の青へ 溺れ落ちてく

 


嗚呼 ゆらり揺れる息続かない海で

闇に呑まれる私を刺す夜光が 王子様(あなた)ならば

 


自傷に塗れた手を取って 自虐に染まった瞳を引いて

救いが無いのなら掬い上げてみせて

この想いの代償が そう 刃を踏む痛みだとしても

それすらも愛しましょう ほら海が呼んでる

 


独占、欲望、愛憎。少女は耽溺する

幻影の青へ 溺れ堕ちてく

 


さあ 本能と理性が交わり合う午前四時

晨光が偽りの私を裁き出す

 


甘美な視線で暴いて 毒牙の笑顔で騙して

救いがあるのなら王子様の手で堕として

この想いの代償が そう 王子様を呼ぶ声だとしても

王子様に愛を乞うわ 泡になってしまう前に

 


手を引いて 抱き寄せて 口吸いをして

「 足りない、もっと 」

背を撫ぜて 身を喰んで 苦しいくらい

「 あなたに、溺れていく 」

 


言葉の首輪で繋いで 吐息の手錠で縛って

救いが無いのなら掬い上げてあげる

この想いの代償がもう 私のすべてと云うなら

藍色の深海へ 溺れ堕ちてしまうから

泡になる その前に わたしのなまえを よんで

 

言の葉 折原藍

作曲     雷条